散歩という名の心臓リハビリ
秋の陽射しがふりそそぐ午後、今日も散歩に出かけました。
最近の日課です。
といっても、無理はしない方針で。
晴れた日だけ。
気分がのった日だけ。
体調がいい日だけ。
近所の小道をそぞろ歩きします。
落ち葉を踏みしめ、草と木と土と風の匂いを吸い込み、鳥のさえずりに耳を傾け、澄んだ青空を眺めて。
ジーンズのおしりポケットに入れたスマホからBGM音楽を流しながら。
清々しく、ゆっくりと歩く。
でも、好きで歩いているわけではありません。
わたしにとって散歩は趣味ではないのです。
これは、散歩という名の心臓リハビリです。
いつも若干の義務感と抵抗を感じる、苦行のようなものなのです。
心臓リハビリとの出会い
心臓リハビリと出会ったのは、2000年頃だったでしょうか。
今から17年前?(もうそんな年月が経ってしまったのか・・・)
内科的治療が限界に近づいていた頃、安静療法から一転して、運動療法=心臓リハビリを勧められることになりました。
安静から積極的リハビリへ。
欧米から遅れること10年余り、日本での心不全治療が転換期を迎えていた時期でした。
あまりの方針転換に、ひどく驚いたことを覚えています。
心臓リハビリ開始
心臓リハビリを始めるにあたって、2週間ほど入院しました。
まずは心肺運動負荷試験(CPX)という自転車こぎによる心肺機能の検査があります。
その結果に基づき、医師によって運動処方が作成され、それに従って運動を行います。
運動処方の内容は、たとえば1日目、
(5分間歩行 × 3セット)× 3クール = 45分歩行/日
※セット間休憩5分
※時速1.5km/h
※総歩行距離=1.25km
のようなもの。
徐々に歩行距離をのばし、歩行速度も上げ、最終的に、
(6分間歩行 × 2セット)× 3クール = 36分歩行/日
※セット間休憩5分
※時速2.5km/h
※総歩行距離=1.5km
といった内容になりました。
なおかつ、ベッドサイドに腰かけた足上げ筋トレもありました。
それまでほとんど安静生活だったのに、これはきつかった・・・
ですがそれ以上に、闘志がメラメラと燃え上ってきました(笑)
退院後、このリハビリを自宅でも続けるよう指示を受けたのでした。
挫折
意気揚々とスタートしたのはよいのですが、なかなかにきつい・・・
結局、8ヶ月くらいで体調を崩して挫折してしまいました。
ちょうど冬にさしかかった頃だったので季節的な要因もあるでしょうが、日常生活の負荷も加わり、わたしの心臓には運動強度がハードになってしまったのかもしれません。
そんなわけで、リハビリに対してすっかり心が折れてしまったのでした・・・
そこまでして・・・
また別の日の、入院中のことでした。
入院するともれなくリハビリがついてくる病院(循環器病棟)なのですが、相部屋の患者さんもみな心臓リハビリにいそしんでいます。
多くはリハビリ室に出向くのですが、ベッド上しか動けないおばあさまがいました。
見るからに、あまり具合がよくないようでした。
ですが、そのおばあさまにもリハビリが課せられていました。
ベッド上でゴムボールを踏む足の筋トレです。
「寝ていると足の筋肉が落ちてしまいますから、がんばりましょうね」と看護師さんはおばあさまを励まします。
おばあさまは、「やりたくないの・・・」と言います。
看護師さんは、「それでは足が弱ってしまいますよ!さぁ、やりましょう!」と叱咤激励します。
仕方なくゴムボールを踏むおばあさま。リハビリが終わってグッタリのご様子です。
その晩の真夜中、寝静まっていた病室にバタバタと足音が聞こえ、ふと目覚めました。
カーテンの向こう側で看護師さんが出入りしている模様。
しばらくすると静寂が訪れたので、わたしはまた眠りに落ちました。
あくる朝、前日にゴムボールを踏んでいたおばあさまがいなくなっていました。
真夜中にお亡くなりになったということでした。
死の前日までリハビリをする必要があったのか。
本人が嫌がっていたのにリハビリさせる意味があったのか。
そこまでしてリハビリしなければならないのか。
QOL(生活の質)を上げるために積極的に取り入れられているリハビリ。
ですが、このおばあさまの一件を目の当たりにして、わたしの中に(強制的な)リハビリに対する抵抗感や疑念のようなものが生じたことも事実です。
死ぬまで生きる。よりよく生きる。それはわかっているけれど・・・
レアケースだったのかもしれませんが、リハビリについて考えさせられる出来事でもありました。
心臓手術
内科的治療が限界だったこともあり、ほどなくして心臓手術を受けることになりました。
麻酔で眠っている間に、胸骨をパカッと開けて、心臓の不具合をサササッと治していただきました。
そして、術後すぐに心臓リハビリが始まりました。
ここでもリハビリは重要な位置を占めていました。
手術翌日にはベッドを起こし、四日目くらいには自力で歩けたような気がします。
さらに退院するまでの3週間、骨折状態の胸部をバンドで固定して、病棟内を歩行する心臓リハビリを毎日行いました。
心臓リハビリの成果というより、手術自体の成果が絶大だったようで、予想だにしないほど普通っぽく動けるようになったのでした。
社会生活
限りなく普通っぽく変身して、遅まきながら社会デビューしました。
それから約10年、社会生活に奮闘。
恋とか愛とかで消耗・・・(笑)
ブラック企業で疲労困憊・・・して、今に至ります。
心臓リハビリ以上の、ハードな社会生活でした。
コケた!
最近の話です。
ある日、知人とおしゃべりしながら歩いていたら、地面の溝に足をとられて足首がグキッとなり、ヨロッとよろけ、危ない!と踏ん張ったら太ももの筋肉が貧弱すぎて踏みとどまれず、そのまま片膝と片手をドン!と地面について軽く擦りむいてしまいました。
コケてしまった・・・!
お年寄りみたいな筋力の弱々しさに、愕然としてしまいました・・・
これはダメだ、これではダメだ、と思いました。
セミリタイア生活に突入してから1年半、相当に身体がなまってしまっていました。
持久力も落ちているようで、ちょっと長めの距離を歩くと軽く息切れがします。
遠出をしようにも、体力的にまるで自信がない状態です。
これはもう、心臓リハビリと筋トレを始めるしかありません!
散歩と筋トレ
とりあえず、散歩することにしました。
時速や距離は考えず、近所の小道をゆっくり一回り歩いてくると、18分くらいになります。
無理をすると長続きしないので、冒頭にも書いたように、晴れた日だけ、気分がのった日だけ、体調がいい日だけ、と決めています。
体調をみながら、歩行距離と歩行速度を上げていく予定です。
今はちょうどいい陽気の季節なので外を歩けますが、真冬(あるいは真夏)になったらどうするのか?
その時は、公共体育館があります。
体育館なら全天候対応の空調完備。
外周にランニングコースが設けられており、コースには距離が刻まれているので、歩行距離や時速がわかります。
しかも無料(笑)
それから、筋トレも重要です。
以前、お医者さんや作業療法士さんに教えていただいた筋トレ各種。
- かかと上げ20回(1日1-2セット)・・・ふくらはぎ強化
- スクワット10回(1日1-2セット)・・・太もも強化
- 壁腕立て伏せ10回(1日1-2セット)・・・上腕強化
などを行います。
本気でやろうとしたら結構ハードです。
そんなに(全然)できてませんけど、気がついた時に少しずつ。
課題
いかにモチベーションを維持するか。
そして、いかに孤独とたたかうか。
この課題はずっと変わりません。
トレーナーがついているわけではないので、自分とのたたかいになります。
ライ〇ップがうらやましいです(笑)
せめて気分をアゲるために、音楽は欠かせません。
あとは、いかにテキトーであるか。
歩いたり、休んだりの気ままな繰り返しです。
挫折しないことが重要です。
さいごに
そんな感じで、散歩(心臓リハビリ)を続けてみたいと思います。
力まずに、無理せずに。
できれば、お散歩が好きになれますように。
この先、溝に足をとられてもヨロけてコケませんように(笑)