【心臓弁膜症】僧帽弁修復マイトラクリップが保険適用(4月~)になったそうです
マイトラクリップって、ご存知ですか?
わたしは過去にどこかで見聞きしたような気がするものの、その詳細についてはまったく知りませんでした。
先日、こんなニュースを見つけましたので、共有します。
東京新聞TOKYO Web(2018年8月21日)より
東京新聞:心臓「MR」 カテーテル治療 保険適用 高齢患者、広がる選択肢:暮らし(TOKYO Web)
「MR」とは、Mitral valve Regurgitation、つまり僧帽弁逆流=僧帽弁閉鎖不全のことです。
僧帽弁は、心臓の左側、左心房と左心室の間にある心臓弁です。
肺から戻ってきた血液が左心房に入り、そして全身へと送り出す左心室に流れる、その間を仕切る二尖弁で、非常に重要な弁です。
僧帽弁という名前の由来は、カトリックの司教冠に似ているため命名されたそうです。
この僧帽弁が逆流をおこすと、左心房に負荷がかかったり、左心室の仕事量も増えて負荷がかかったりすることで、息切れ、肺うっ血、心房細動、左心房左心室の拡大、果ては心不全などにもつながり、命にもかかわってきます。
なんとかこの逆流を止めなければなりません。
根本的な治療としては、弁置換(生体弁や機械弁に置き換える)という手術が行われますが、高齢や体力がない人、また過去に心臓手術をしている患者さんなどは手術が難しい例もあります。
また、手術をしない内科的治療(薬物療法)にも限界があります。
そこで登場したのが、このマイトラクリップ(MitraClip®)です。
記事によれば、脚の付け根からカテーテルを挿入し左心房へと進め、超音波(たぶん経食道エコー、口から食道にエコー機器を入れて、心臓の裏側から超音波をあてる)画像で弁の具合を確認しながら、カテーテルの先端からマイトラクリップを送り出し、閉じ具合の悪い二枚の弁を挟む、ということらしいのです。
いったい、どうやってクリップで閉じられるのだろう?
弁を挟んで閉じてしまったら、閉じっぱなしになってしまうのでは?
と素朴な疑問がわいてきたのですが、どうやら弁の中央部だけクリップで挟むと、その両わきに2つの血流路?が残されるようなのです。
イメージは、以下の動画をご参照ください。
この動画でわかるのは、右脚の付け根からカテーテルを挿入し、右心房~心房中隔?を経て左心房にアクセス、カテーテル先端部から送り出したマイトラクリップで僧帽弁の中央部を挟む、ということのようです。
うまい具合に挟めるものですね。
動画は、実際のエコー画像のように心臓の裏側(食道側)から映しているようなので、僧帽弁の右側に見える弁は、たぶん大動脈弁でしょうか。
クリップは何度も挟み変えることが可能。
そして、弁の上方向から見ると、クリップの両わきに2つの血流路が保たれ、逆流がストップしたことがわかります。
胸を切開して心臓手術をしなくても、カテーテルで弁の閉鎖不全を解消(改善、軽減)することができる。
数時間の処置、数日間の入院期間だけで退院可能とのこと。
すごいですね。
確かに、これまで身体の負担が大きく手術を断念せざるを得なかった患者さんにとっては朗報です。
さらに表題の通り、今年4月から保険適用となったことで、医療費も限定的(高額療養費の範囲内)な負担ですむでしょう。
このデバイスを開発したのはアボット社。
Abbott プレスリリース(2017/11/06)より
アボット、日本初となる経皮的僧帽弁接合不全修復システムMitraClip® NT システムの製造販売承認を取得
外科的治療が困難な重度の僧帽弁閉鎖不全症の患者のための、日本で初めての低侵襲な経皮的僧帽弁接合不全修復システム
ということです。
新たな治療選択肢が提供されることは、いち患者として大歓迎。
デバイスの開発陣、手技を行うドクタースタッフ方には感謝するばかりです。
多くの患者さんが、このマイトラクリップによって救われるといいですね。
追記:2018年8月27日
読売オンライン・ヨミドクターでも、マイトラクリップが取り上げられました。
とてもわかりやすくまとめられた記事です。
YOMIURI ONLINE yomiDr.(ヨミドクター)(2018年8月27日)より
カテーテル治療で僧帽弁修復…クリップで血液逆流防ぐ : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)