うたたねモード

セミリタイア?っぽく生きてみる。

元職場が相変わらず機能不全だった件

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元職場の先輩から急な誘いが入り、ランチとお茶に出かけた。

 

在職中にはあまり話はしなかったが、時々帰り道にバス待ちの先輩を車でひろって家の近くまで送り、その車中で一日の労を労いあうくらいの間柄だった。

だが、私が退職してしばらく後、自宅にその先輩からお花が届けられた。

お礼の電話をかけた電話口で、思わずそれまでの職場の愚痴つらみを打ち明けたら、「そうだったの・・・、今度ごはん食べにいきましょう!」といって慰労会的なランチに誘ってくれたのが付き合いの始まりである。

 

明るい人で、とてもおしゃべり好き。

とめどない先輩の話をふんふんと相槌を打ちながら聞き続ける。

他愛なくも楽しい雑談である。

 

ランチからカフェに流れて間もなく、話題は元職場のことに移った。

 

核心は、いつもA男さんのことだ。

 

A男さんの、あの言い方はない。

A男さんにみんな振り回されている。

A男さんを中心に世界が回っている訳ではない。

A男さんは人の失敗をあげつらう。

A男さんは人には厳しいが、自分の非は絶対に認めない。

A男さんは人をいいように使って、自分ではひとつも動かない。

A男さんは上司に見せる顔と、末端社員に見せる顔が全然違う。

 

要するに、A男さんはひどい、というのである。

 

わたしが在職中も、A男さんの言動に眉をひそめざるを得ない場面が少なからずあったことは確かだ。

 

だが、悩ましいことに、A男さんは仕事がデキる。

頭脳明晰な切れ者だ。

言ってることは至極正論で、A男さんと衝突しても到底太刀打ちできない。

みんな何も言えずにストレスをためているのである。

 

そんなA男さんだが、時々なぜかわたしにはよくしてくれた。

A男さんが管轄する仕事がわたしに割り振られて接点があったからなのか、A男さんを唯一重用する上司とわたしとの間に私的コネクションがあったからなのか、理由は定かではない。

 

例えば。

重い荷物を運ばなければならない場面で、「そのさんはしなくていいですよ、大変でしょ」と気遣ってくれたり。

わたしが調べ物をしていると、「これ、貸しますよ」と参考資料を渡してくれたり。

バックヤードで作業中に、用事で訪れたA男さんと少し世間話をする機会があり、ふと洩らしたこちらの一言に適切な助言をくれたり。

 

そんなA男さんの一面を知っているので、わたしは他の人のようにA男さんを毛嫌いする気になれない。

A男さんは悪い人ではない、と思う。

 

「みんなもっと仲良くしたらいいのに。A男さんとも近づいて話をしたらいいのに」と先輩に言うと、先輩は「嫌だ」と言う。

「なぜですか?」と問うと、「嫌だから」と言う。

・・・嘆息するしかない。

 

在職中にわたしが耐えられなかったのは、A男さんの自己中的な言動そのものよりも、A男さんと融和しようとしない空気の方だった。

A男さんばかりではない。

「あの人は仕事ができない」「あの人は対応がおかしい」と評される幾人かの人についても、許容せず蔑む空気があった。

 

同僚が数人集えばA男さんの悪口が聞こえ、仕事ができない人やおかしい人の陰口が始まる。

わたしもどこかで陰口を言われているのかもしれない。

 

わたしは恐ろしくなった。

 

同調圧力

 

この排他的な空気の正体。

 

* * * * *

 

「職場がピリピリギスギスしているのは、A男さんのせいだ」と先輩は言う。

A男さんが異動にでもならない限り、この状況は変わりそうにない。

いや、A男さんがいなくなっても、別の誰かがターゲットになるだけではないか。

あの職場では。

 

わたしが去って新しい人が入ったりすればまた空気が変わるだろうと思っていたけれど、何も変わっていなかった。

新しく入った人でさえ案の定、陰口の対象となっていた。

先輩は元来優しくていい人なのだが、小さなことが積もり積もってよほど心に溜まっているのだろう。

大げさに考えることはない。これはただのガス抜きに過ぎない。

気持ちはよくわかる。

でも、諸手を挙げて賛同はできない。

 

ダイバーシティが重視される昨今、多様性を受容しなくてどうするのか。

同調圧力とか、ナンセンス。

 

まずはそのコミュニケーション機能不全をなんとかしようよ、と思う。

その人がその人であることを、そのまま受け入れようよ、と思う。

同調圧力で叩いたり潰したりはじいたりするんじゃなくて。

 

* * * * *

 

先輩から元職場の話を聞いて、心から退職してよかったと実感した。

あの場所で心身をすり減らし続けても、なんの実りも得られない。

退職したら、同調圧力から解放されてサッパリしたわたし。

 

ランチメニューを見て、「これにする? あ、こっちもいいね」という先輩に、「わたしは別のこれにします」とはっきり選んでしまったのは悪かっただろうか?

以前なら、ランチメニューの合議では先輩の意見に合わせただろう。

だが、もう空気を読むのはやめることにした。

 

元職場は相変わらずだが、わたしは少し変化したようだ。