図書館て、ステキです
仕事を辞めてから、ときどき図書館に出かけるようになった。
昔から読書は苦手だが、なぜか本のある場所は気分が落ちついて好きだった。
小学生の時は、カラフルな本の表紙を眺めて気に入った本を借りてくるのが楽しみで、昼休みには学校の図書室に出入りしていた。
高校生時分もやはり図書室は憩いの場所で、どれだけの本の裏トビラに付いている図書カードに自分の名前を記載できるかという目的のために、誰も読んでいない本を探しては借り、こ難しそうな文学本をいつもバッグの中に入れて通学していた。全部を読了したわけではなかったが、ささやかな満足だった。
学生になると街の本屋に行くことが楽しみになり、文庫や新書を次々と揃えた。
読書欲よりも、自分の家の本棚にズラズラっと統一された背表紙を並べて悦に入るコレクション欲の方が勝っていたかもしれない。
学生を卒業すると、学内図書館や本屋とは疎遠になった。
それから長い年月が過ぎた。
仕事を辞めて、ふと公立図書館の存在を思い出し、ふらっと出かけてみた。
公立図書館というと、灰色のビニール床、灰色のスチールラックに面白味のない辞書や単行本が無造作に並び、薄暗い室内の蔵書を無機質な蛍光灯が白々と照らしている。
貧相な図書館・・・昔のまま、長らくそんなイメージを抱いていた。
ところが、近年新しく建て替えられた公立図書館はとてもモダンで明るい雰囲気に生まれ変わっていた。
吹き抜けのホール。
カーペットや木調の床。
ホワイトベースや木製の書架。
充実の蔵書。
あちこちに置かれたクッションのよいベンチやソファー。
オープンにデスクが配置されたラウンジのような閲覧スペース。
窓際に並ぶ明るいカウンター席。
ガラス張りの向こうに外界を望むこじんまりした飲食ブース。
きれいなトイレ。
IT化された貸出カウンターと蔵書検索システム。
統一フォントのピクトサイン。
多くの人がそこにいるのに、静寂を保った広い空間。
何もかもが心地よかった。
(好きだ、ココ・・・)
そして、今までほとんどのぞいたことがなかった視聴覚スペースで、わたしは目を見張った。
CD、DVDの数々。
買うかどうか迷っていたあのCD、映画館に観に行けなかったあの映画が、時差こそあれ、かなり揃っている。
レンタル店には負けるかもしれないが、必要充分なラインナップだ。
それが借り放題とは!
本はもちろんのこと、書架に並んだCDやDVDを眺めて「宝の山」のように思い、またこれらが無料で借りられることの行政サービスの素晴らしさに、(ちょっと大袈裟かもしれないが)、今更ながら感嘆したのである。
で、今日は、大橋トリオとPerfumeを借りてきたのだった。
閲覧スペースで好きなだけ静かに本を読むのもいいだろう。
視聴覚ブースで映画を観ることもできる。
気が向けば、学習室でPCを開けてノマドするのも一興だ。
時間がゆっくり流れているここは、セミリタイア組にはぴったりの場所である。
ほんと、図書館て、ステキです。